2009年9月15日火曜日

ヘンな鉄道(客車編、その一)

 少しずつ涼しくなってきました。鉄道の冷房も随分進みましたが、過去には「暖房車」が
ありました。暖房がついている車輌ではありません。暖房するための車輌です。

 もともと機関車に引っ張られる座席のついた車輌に過ぎなかった客車ですが、照明がつき、
トイレがつき、暖房がつくなど進化していったのです。
 電車の場合は最初から電気ストーブのような形で暖房を設置しましたが、客車には色々な
暖房方式が試されました。今では観光資源にもなった津軽鉄道のようにストーブを設置したり、
廃止された羽後交通のように火鉢を乗せたり。最も簡単ですが車輌が増えてくると管理が
大変です。そこで、蒸気機関車から蒸気をちょっとだけ分けてもらうことにしました。
 蒸気(スチーム)暖房の登場です。必要なものは蒸気パイプと放熱器と水抜きバルブぐらいで、
蒸気機関車を管理できるのなら技術的な問題もありませんから、急速に普及しました。

 ただし、ローカル線には混合列車(ミキスト:mixedの転訛?)といって、客車と貨車が一つの
列車として運転されることがありました。機関車-客車-貨車の順なら良いのですが、機関車-
貨車-客車では蒸気が送られないので、ストーブを乗せたりお客に我慢(!)してもらうことも
あったようです。

 一気に標準となった蒸気暖房ですが、電気機関車やディーゼル機関車で運転を始めると、
暖房方式をどうすればよいのかが問題になりました。ディーゼルカーではラジエーターの
冷却水から熱を採って暖房する方式がありますが、機関車では無理です。仕方がないので
暖房用のボイラーを積んだ客車(見た目はほとんど貨車)を作ることにしました。これが
暖房車です。

 手っ取り早いのは確かですが、冬にだけ列車全体が長く重くなるわ、人件費はかかるわ、
オフシーズンは邪魔だわで、けっこう厄介です。仕方がないので旅客用機関車に暖房用
ボイラーを乗せることにしました。SG搭載機といわれるのがそうです。
 その後、電気機関車から暖房用電源を送電する方式に移行し、客車には蒸気・電気両方を
搭載する改造が行われました。混合列車も減っていき、暖房車は消滅したのです。

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